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「言いにくいこと」を適切に伝える技術:アサーティブ・コミュニケーションとDESC法

職場で「断れない」「意見が言えない」と悩んでいませんか?

あるいは、ついつい「攻撃的」になってしまい、パワハラ扱いされてしまった経験はないでしょうか。

実は、この両極端な問題を解決する技術があります。それが「アサーティブ・コミュニケーション」です。

アサーティブ・コミュニケーションとは

アサーティブ・コミュニケーションとは、「自分も相手も大切にする」コミュニケーションスタイルのことです。

3つのコミュニケーションスタイル

コミュニケーションには、大きく分けて3つのスタイルがあります。

スタイル特徴結果
非主張的(受動的)自分の意見を言わず、相手に合わせるストレスが溜まり、自己肯定感が下がる
攻撃的自分の意見を押し付け、相手を否定する人間関係が悪化し、孤立する
アサーティブ自分の意見を伝えつつ、相手も尊重する健全な関係を築き、問題が解決する

多くの人は、非主張的か攻撃的のどちらかに偏りがちです。しかし、アサーティブなコミュニケーションは「技術」として習得できるものなのです。

アサーションのマインドセット:自他尊重

アサーティブ・コミュニケーションの根底にあるのは「自他尊重」という考え方です。

自己肯定感とコミュニケーションの関係

自己肯定感が低いと、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 過剰にへりくだる:「私なんかが意見を言っても…」と自分を抑え込む
  • 逆に攻撃的になる:防衛反応として、相手を攻撃してしまう

どちらも、自分の価値を適切に認識できていないことが原因です。

アサーティブ・コミュニケーションは、「攻撃せずに主張する」ことを可能にします。そして、それは性格を変える必要はなく、「言い方の型」を変えるだけで実現できるのです。

実践テクニック:DESC法

アサーティブ・コミュニケーションを実践するための具体的な手法が「DESC法」です。

DESC法は、4つのステップで構成されています。

DESC法の4ステップ

D (Describe):事実を描写する

まず、客観的な事実を述べます。感情や評価を交えず、誰が見ても同じように認識できる事実だけを伝えます。

:「会議が10分遅れて始まりました」

E (Express):自分の気持ちを伝える

次に、その事実に対する自分の気持ちを伝えます。「私は〜と感じました」という形で、自分の感情を主語にします。

:「待っている間、不安でした」「時間がもったいないと感じました」

S (Specify):具体的な提案をする

問題を解決するための具体的な提案を行います。「〜してほしい」「〜しませんか」という形で、建設的な提案をします。

:「次回は開始5分前に集まりませんか」

C (Consequence):結果を提示する

提案を実行した場合の良い結果を示します。これにより、相手も提案を受け入れやすくなります。

:「そうすれば、定時に終われます」

DESC法の全体像

4つのステップを組み合わせると、以下のようになります。

「会議が10分遅れて始まりました(D)。待っている間、時間がもったいないと感じました(E)。次回は開始5分前に集まりませんか(S)?そうすれば、定時に終われます(C)」

このように伝えることで、相手を攻撃せずに、自分の意見を適切に伝えることができます。

ケーススタディ:会議の遅刻問題

同じ問題を、3つのコミュニケーションスタイルで比較してみましょう。

❌ 非主張的(受動的)な例

「いえ、大丈夫です…(内心:またか…)」

問題点

  • 問題が解決しない
  • ストレスが蓄積する
  • 相手は問題に気づかない

❌ 攻撃的な例

「なんでいつも遅れるんですか!時間を守れないんですか!」

問題点

  • 相手を非難している
  • 感情的で建設的ではない
  • 人間関係が悪化する

✅ アサーティブな例(DESC法)

「会議が10分遅れて始まりました。待っている間、時間がもったいないと感じました。次回は開始5分前に集まりませんか?そうすれば、定時に終われます」

良い点

  • 事実を客観的に伝えている
  • 自分の気持ちを適切に表現している
  • 具体的な解決策を提案している
  • 相手を尊重しながら主張している

DESC法を使うべき場面

DESC法は、以下のような場面で特に効果的です。

職場での活用例

  • 断りたい時:「今週は既に3件の案件を抱えています(D)。これ以上受けると品質が落ちそうで心配です(E)。来週なら対応できます(S)。そうすれば、しっかりとした成果物をお渡しできます(C)」

  • 意見を言いたい時:「この企画書、ターゲットが不明確です(D)。読者が誰なのか分からず、不安を感じます(E)。ペルソナを1つ設定しませんか(S)?そうすれば、メッセージが明確になります(C)」

  • 改善を求めたい時:「資料の提出が期限より2日遅れました(D)。スケジュールが狂って困りました(E)。次回は期限の1日前に確認させてください(S)。そうすれば、余裕を持って対応できます(C)」

プライベートでの活用例

  • 家族との関係:「最近、話を聞いてもらえていない気がします(D)。寂しく感じています(E)。週に1回、30分だけ話す時間を作りませんか(S)?そうすれば、お互いの気持ちが分かり合えると思います(C)」

アサーティブ・コミュニケーションの効果

アサーティブ・コミュニケーションを実践すると、以下のような効果が期待できます。

個人への効果

  • ストレスの軽減:言いたいことを適切に伝えられるため、ストレスが溜まりにくくなります
  • 自己肯定感の向上:自分の意見を尊重することで、自己肯定感が高まります
  • 精神衛生の改善:我慢や攻撃ではなく、適切な主張ができるようになります

人間関係への効果

  • 信頼関係の構築:相手を尊重しながら主張するため、信頼関係が深まります
  • 問題の早期解決:問題を適切に伝えることで、早期に解決できます
  • 建設的な対話:感情的にならず、建設的な対話ができるようになります

アサーティブ・コミュニケーションの注意点

アサーティブ・コミュニケーションを実践する際の注意点もあります。

すぐに結果を求めない

アサーティブ・コミュニケーションは「技術」です。最初はぎこちなくても、練習を重ねることで自然に使えるようになります。

相手の反応をコントロールしようとしない

アサーティブ・コミュニケーションは、「自分の伝え方」をコントロールする技術です。相手がどう反応するかは、相手の自由です。

完璧を目指さない

最初から完璧にDESC法を使おうとしなくても大丈夫です。まずは「D(事実を述べる)」と「E(気持ちを伝える)」だけでも、十分に効果があります。

まとめ:性格を変えるのではなく、言い方の「型」を変える

アサーティブ・コミュニケーションは、性格を変える必要はありません。「言い方の型」を変えるだけで、自分も相手も大切にするコミュニケーションが実現できます。

覚えておきたいポイント

  1. 自他尊重:自分も相手も大切にする
  2. DESC法:事実→気持ち→提案→結果の順で伝える
  3. 技術として習得:練習すれば誰でもできるようになる
  4. 精神衛生の防具:アサーションは心を守る技術

職場で「断れない」「意見が言えない」と悩んでいる方、あるいは「攻撃的になってしまう」と悩んでいる方は、ぜひDESC法を試してみてください。

それが、あなたの精神衛生を守る「防具」になるはずです。